実験のある算数って楽しい

 このレポートは、どの子も伸びる研究会の機関誌『どの子も伸びる』の2008年9月号に掲載されたものです。

3年 重さの学習の風景

 本稿は、3年生の3学期に行った「重さを量ろう」の実践記録の一部です。ここでは、重さの保存性について実験を通して学習した後に行った「重さの加法性」と「キログラム」の学習の場面を取り上げます。

 「重さの加法性」は、比較的子どもたちも理解しています。しかし、その理解の程度は、まだまだ安定しているとはいえません。例えば、「保存性」と関連する次のような場合に子どもたちはどう考えるのでしょうか。

 保健室からデジタルの体重計を借りてきて、小数点以下をガムテープで隠します。職員室からは、冷蔵庫に入っていた900ミリリットル入りのポカリスエットをもらってきます。

 初めは、数人の子に一人ずつ体重計に乗ってもらい、しゃがんだり、片足で立ったり、すうっと力を抜いたり、逆に力を入れたりして、体重が変化するかどうかを確かめます。それらをクイズ形式で楽しみながら実証していくのですが、格好や気持ちでは体重は変わらないことを確かめます。

 次に、ポカリスエットを取り出して、「飲みたい人を2人募集します」と言います。これは、勉強ではないのですが、大変盛り上がります。たくさんの子が飲みたいといって出てきました。ジャンケンで女の子一人と男の子一人が、授業中にただで飲める幸運にありつきました。

 さて、それからですが、2人に同時に体重計に乗ってもらいます。合わせてaキログラムあることを確認します(この時、小数点以下を隠しているガムテープを少しめくって、小数第一位の数字が五前後になるよう服で調整しておきます)。次に、ポカリスエットの重さも体重計で測ります。1キログラムを表示しました。

 それから、次のように話しました。

「2人の体重は合わせてaキログラムでした。ポカリスエットの重さは1キログラムでした。これから、2人にポカリスエットを全部飲んでもらいます。2人にしたのは、一人では900ミリリットル全部を飲むのは大変だからです。2人に飲んでもらった後、再び、体重計に乗ってもらいます。2人合わせた体重はどうなるでしょうか。

  ア 体重は一キログラムふえる
  イ 変わらない
  ウ 体重は一キログラム軽くなる」

 こんな風に、今まで目の前にあった物を飲むという行為を通して、目の前からなくしてしまうのです。当然お腹の中に入ったわけですが、重さも消えてしまうのでしょうか。

 最初に、一人一人の予想を班ごとに集約させると下の表のようになりました。さすがに軽くなるという予想はないのですが、体に取り込まれるので体重は増えないという意見がありました。話し合っていくうちに、「変わらない」という意見が増え、「1キログラムふえる」が10人、「変わらない」が11人になりました。

   1kgふえる  変わらない  1kg軽くなる
 1班  4  1  0
 2班  5  0  0
 3班  6  0  0
 4班  2  3  0
 合計  17  4  0

 実際にやってみると、ちょうどaキログラムに1キログラムを足した数値になりました。実験は大成功でした。

 重さの単位の学習については、まずキログラムを学習し、それからグラムに移っていきました。キログラムを先に取り上げたのは、それが質量の基本単位であるからという理由だけではなく、既に学習を終えている水のかさ1リットルの重さでもあるからです。実際、上皿自動秤を用意し、1リットル升に水を入れていくと、ちょうどいっぱいになった時に針が1キログラムを指しました。このようにして、1キログラムという重さを既習学習のリットルと結びつけ、1キログラムの古典的な定義をしたわけです。

 1キログラムの量感を覚えさせることも大切です。体重を量る際に使ったポカリスエットの入れ物に水を入れて1キログラムのサンプルにしました。それから、班毎に身の回りの物を集めるなりして、できるだけ1キログラムに近い重さになるように競わせました。

 さて、グラム学習のことに話を移します。よく知られているように、1円玉の重さは、ちょうど1グラムです。このことを上皿天秤で確かめます。次に、10グラムの分銅と10枚の1円玉がつり合うことを確かめます。更に、50枚の1円玉の重さが、ちょうど50グラムになることも確かめます。

 次は、1キログラムまで量れる上皿自動秤を用意し、先ほどの1円玉50枚を載せます。針が動いて、50の目盛りで止まります。

「そこで問題です。1キログラムになるには1円玉が何枚いるのでしょう。班学習開始!」

 班学習の結果は、どの班も「1円玉が1000枚」との予想でした。そこで、確かめてみようというわけで、今度は2キログラムまで量れる上皿自動秤を用意し、それに1リットル升を載せて、目盛りをゼロに合わせました。そして、千円を1円玉に両替した20束から1束ずつ、包みを破ってリットル升に入れていきました。ところが、実験の途中で授業終わりのチャイムが鳴ってしまったので、実験の続きは、またにしようと思ったのですが……。

 5時間目の終わりに先生が、「あーつかれた。もうおしまいにしよう。」と言いました。けれど、みんなが「いややー」と言って、先生が、「心のスケッチ(※作文のこと)に書いてくれますか。」と言いました。みんなは、「うんー」と言いました。それでじゅ業をつづけてくれました。1円玉が900まいの時にぜったいに1000まいだと思っていたら、本当に当たりました。とーてもうれしかったです。

 今日、5時間目に算数をやりました。今日も1円玉を使いました。今日は、1キログラムは1円玉で何まいかをやりました。実さいに、はかりを使ってやりました。50グラムずつやりました。はじめはちゃんとはかりにのるけど、全部はのらないから、1リットルますを使いました。まだけっかが出ていないのに、チャイムが鳴りました。先生は、「やめるでー」と言ったけど、みんなが反たいしたので、先生は、「心のスケッチは、算数のこと書きい」と言わって、私たちがOKを出したので、つづきをやってくれました。けっかは、1000まいでした。楽しかったです。

 こうして、1円玉が1000枚で1キログラムになること、だから、「1キログラム=1000グラム」であることを学習しました。

 この授業で行った「実験」では、厳密に1キログラムを量り取ったことにはなりません。子どもたちには、秤の針が50グラムずつ規則正しく増えていくので、この方法は視覚的には非常にわかりやすかったのですが、本当に実証するには、上皿天秤を使わないと正確なことは言えないはずです。ただ、この授業をした時には、まだ1キログラムの分銅が用意できていませんでした。

 後に、1キログラムの分銅を手に入れて、次のように実験をしました。

 子どもたちの目の前で、硬貨を数える機械を使って、1円玉が確かに1000枚あることを確かめます。

 上皿天秤の左右の皿の両方に、1リットル升を載せます。このままではつり合わないので、クリップでつり合うように調整します。クリップを入れた1リットル升の方に1キログラムの分銅を入れます。

 ここで問題を出しました。

「1円玉1000枚の重さは、1キログラムのはずです。ですから、これから1円玉を1000枚入れれば、ぴたっとつり合うはずです。でも、本当に1円玉1000枚の時に、ぴたっとつり合うのでしょうか。というのは、この1円玉は、誰かが使っていたものなので、すり減って軽くなっているかも知れないし、逆に手あかなどがついて重くなっているかもしれません。ですから、先生にも答えは分からないのです。やってみなければわからないのです。でも、予想を立てましょう。みんなはどうなると思いますか。」

 3円だけ別にしておいて、もう一方の1リットル升に1円玉を入れていきます。997枚の1円玉を入れた状態で、上皿天秤は動き始めていて、998枚でほぼ2目盛分針が中央に近づき、更に999枚であと中央までに2目盛分が残った状態になりました。そして、1000枚でみごとにぴたっと中央で止まったのでした。

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