第3章 第1節

第3章 学校自治における青少年運動と教師の役割

 第1節 自治組織と青少年運動組織

 青少年運動組織と児童自治の諸機関との相互関係の問題、自治におけるピオネールとコムソモールとの役割の問題に対するクルプスカヤの解決もまた、学校自治の理論への重要な貢献であると思われる。

 共産主義的少年運動は、ピオネール組織として、1922年に開始された。その頃は、子どもたちは学習だけやっておればよい、運動などいっさいいらない、と考えている活動家がまだたくさんいたそういう時期であったのである。ピオネールとは、そもそも「新しいものを建設しはじめる人、新しい道を開く人」のことであり、「開拓者」のことである。(注54)また、ピオネール運動の目的は、クルプスカヤに従えば、「社会主義、共産主義の建設という事業を徹底的にやりぬくような新しい青年を育成すること」(注55)である。

(注54)クルプスカヤ「社会主義建設者の学校」(1929年)『選集、1巻』157ページ

(注55)クルプスカヤ「教育学的問題としてのピオネール運動」(1927年)『選集、1巻』124ページ

 また、コムソモールとは、ロシア共産主義青年同盟のことであり、ピオネール運動を指導することを、ひとつの任務としている組織である。

 クルプスカヤは、学校とピオネール運動との関連と区分をどのように捉えていたであろうか。ピオネール運動の著しい発展に魅せられた青年の中のある人たちが、「学校でなくて、運動だ」という、実際上、学校教育を否定する捉え方をした際に、クルプスカヤは、この考え方を批判して、「一定の経験と一つに結合している系統的な学業を伴わないでは、全一的な一元論的世界観を青年たちは自分のなかにつくりあげることはない」(注56)と述べている。そして、「集団的に生活し労働する能力 ─ これは問題の一面である。」と言い、「明瞭に遠くの方までみること、論理的に思考すること、もろもろの事実を一定の展望のなかに配置することができる能力 ─ これは問題の他の面である。」(注57)と指摘している。言い換えれば、学校では重心が学習にかかっており、ピオネール運動では重心は訓育に移されているのである。他方、学校とピオネール運動は、「相互に緊密に結合していて、一方が他方を補完し、たがいにからみあって」おり、「子どもを新しい体制の闘士かつ建設者に育成する」(注58)という同一の目的で統一されているのである。

(注56・57)クルプスカヤ「学校とピオネール運動」(1924年)『選集、1巻』81ページ

(注58)前掲書、「教育学的問題としてのピオネール運動」124ページ

 それでは、コムソモール組織も含めて、青少年運動組織は、学校自治に対してどのような位置にあるのであろうか。少し長い引用になるが、クルプスカヤの次の記述は示唆深い。

「コムソモールのなかにも、ピオネールたちのあいだにも、優良な子どもたち、いっしょに行動することのできる組織性のある子どもたちがいる。かれらは、集団的作業のなかで、また集団的生活のなかで、自分の習熟を学校へももちこむであろう。かれらは主要な組織者となるであろうし、主要な発言者となるであろう。コムソモールがなく、ピオネールがいないなら、新しい自治を組織していくことは、教師には困難であろう。なぜなら、未組織の子どもたちはしばしば、教師を決定力とみなしているし、かれらのなかには、自主的に思考し、自主的に作業する能力がまだ発達していないからである。この能力を十分に発達させることは、もっとも先進的な子どもたち、コムソモール、ピオネールが、それらの未組織の子どもたちに、新しいやり方で仕事をすることを教える時に、可能となるであろう。」(注59)

(注59)前掲書、「第二科学校における社会的 ─ 政治的教育」97ページ

 ここから理解できるごとく、クルプスカヤは、児童自治の仕事の中では、コムソモールとピオネール組織とが先進的な役割を担うべきだ、と考えていたのである。ちなみに、ピオネール組織自体は、元来、政治組織であって、その機能の一つに、学校内での子どもたちの自治をも組織するという課題があるのである。すなわち、自治の機関をつくり、それらの機関の仕事に影響を与え、全児童集団の努力を方向づけ、調整するということは、この政治組織の機能の一つとされていたのである。

 また、コムソモール組織が、学校自治の中で果たす先進的な役割については、1923年の「国家学術会議教育科学部の自治にかんするテーゼ」の中で、独自に定式化されている。それによると、

「ロシア共産主義青年同盟の各班は、自治の事業にたいして、いかなる特別な権利をも行使してはならない。しかし、この同盟の役割は非常に大きい。…(省略筆者)…それと同時に、その各班は、学校の公共性にほかならない学校自治のすべての意義を理解していなくてはならないし、また、それゆえに、自治の組織化と望ましい方向への自治の進行とを、全力をあげて促進しなくてはならない。」(注60)

(注60)前掲書、「学校の組織的・教育的影響」136ページ

というものであった。

 このように、学校自治の仕事の中で、コムソモールとピオネール組織は、先進的な役割を担うのであるが、それでは教師は、学校自治に対して、どのような姿勢で臨んだらよいのであろうか。これについては、次の節で見ていきたい。

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