子どもの笑顔に国境はない(1)

知ろう世界の友だち 交わろうベトナムの友だち

1 ディエンビエン第二小学校からお客様がやってくる!

 筆者が当時勤めていた学校は、大変小規模な学校で、全校児童数は120数名でした。比較的豊かな農村地帯にあり、住民の転出入は極めて少なく、全体として落ち着いた校風の学校でした。今回紹介する実践は、2003年度に取り組んだ実践です。その時、筆者は担任ではありませんでしたが、3年生20人の総合学習の時間に年間50時間程度授業に入っていました。この実践は、総合学習の時間を使って行なわれたもので、担任の先生と協力して行ったものです。

 さて、筆者は、2003年の2月に、シンガーソングライターの横井久美子さんの熱い想いで実現したベトナムスタディツアーに参加しました。平和が大きなテーマになっており、訪問先の一つにハノイの「タインスアン平和村」がありました。ベトナム戦争(抗米救国戦争)中にアメリカ軍が大量に空中散布した枯葉剤の中に含まれていたダイオキシンが、今も人々の体を蝕んでいますが、この平和村は、ドイツの援助で設立された枯葉剤被害児たちの障害児施設です。

 2月のこのスタディツアーでは、教育施設の訪問としては、この平和村が唯一でした。実は、このスタディツアーに参加するまでの2ヶ月間ほどの間、筆者は現地の小学校を訪問すべく、関係者に受け入れの学校を探してもらっていました。しかし、この願いは諸事情でかなえられませんでした。そこで、帰国後すぐにベトナムの学校を訪問するための2回目のベトナム旅行の企画を練り始めました。時期としては、年内の12月を予定していました。

 ところが、3月にJICAがベトナムへの海外研修の参加者を募集していることがわかりました。しかも内容としてはベトナムの小学校などを訪問する研修でした。筆者はすぐさま応募することにし、審査の結果、参加が認められました。この教師海外研修は、7月末日から10日間の日程で実施され、いくつかの現地の小学校を訪問見学することができました。

 ところで、4月になってベトナムから小学校の先生が来日するという話がにわかに伝わってきました。日本ベトナム友好協会大阪府連合会が招聘し、ベトナムの先生方を日本の学校に案内するとのことでした。思ってもいなかった展開になり、筆者がベトナムの小学校を訪問する以前に、ベトナムの先生方が日本の小学校を訪問することになったのです。

 日本ベトナム友好協会大阪府連合会では、1997年からタインホア市にあるディエンビエン小学校と友好交流関係がありました。ディエンビエン小学校の建て替え費用の一部に日本からの支援金を当てたのです。その支援活動の中心となったのが、日本ベトナム友好協会大阪府連合会でした。それまでに4回ほど日本から友好団がディエンビエン小学校を訪れていましたが、今回は、ベトナムとの国交樹立30周年記念事業の一つとして、ディエンビエン第二小学校(下記参照)から先生方に来ていただくことになったのです。

注:以前はディエンビエン小学校とよんでいましたが、学校が分離して、支援してきた学校がディエンビエン第二小学校となり、新設校がディエンビエン小学校となりました。

友好交流活動を通して何をめざすか

 今回紹介する実践は、ベトナムの子どもたちとの交流をめざすものです。そこで、なぜベトナムなのか、つまりはやりの先進国の国々や中国などではないかです。世界の人口は65億人と言われますが、先進国の人口は、わずかに6分の1程度の11億人です。また、日本も先進国なので、先進国の子どもたちの暮らしに触れるだけに終われば、世界の実情を正しく反映する教育にはなりません。これからの世代にとって、開発途上国と言われる国々を正しく知ることが必要ですし、そのことで地球規模の貧困を解決できるようになると考えます。

 それではなぜ、開発途上国の中でもベトナムなのかということですが、これは筆者の出会いや好みという主観が少し入りますが、1つには、ベトナムは世界最強の軍事大国アメリカを相手に戦い勝利した国であり、今も戦争と平和について考えさせられる傷跡が残っている国であるからです。また、社会主義指向の市場経済という人類が歴史上初めて経験する経済制度の下で、中国に次いで世界第2位の経済成長率を達成している国であり、今後日本とも深く繋がる国と考えたからです。

 そこで、このベトナムの子どもたちとの交流を通して何をめざすかですが、日本の子どもたちが、自分の生活をベトナムの子どもたちの生活と比べてより客観的に捉え直すことができるようになることをあげたいと思います。あまり難しいことをねらうわけではなく、日本に住んでいて当たり前になっている事柄が、本当はそうではなかったんだ、と気づくことを大切にしたいと思います。例えば、日本の子どもたちは毎日当たり前のように学校に通っていますが、それが当たり前のことではないんだと気づくことを大切にします。また、同世代の友だちでありながら、強い希望を持って困難な毎日を生き抜いている友だちの姿に接することで、自分の生活の中で何が大切かを問い直す子どもが出てくれば、大変意味あることと思います。

 ベトナムの子どもたちとの交流を通してめざすものとしての2つ目は、やはり平和の大切さについて共に考えることができることでしょう。ベトナム戦争(抗米救国戦争)は、未だに過去の戦争ではありません。それは、大量破壊兵器の一つである化学兵器の「枯葉剤」などの傷跡が、今もこの国には残っているという事実にとどまらず、ベトナム戦争と同じく新植民地主義者による侵略戦争が今も繰り返されているという意味で、ベトナム戦争は過去の戦争ではないと言えます。日本では戦争体験はかなり風化させられてきていますが、ベトナムでは今も生きています。平和について考えさせられる題材をいっばい発掘することができることでしょう。

ユニセフ学習とベトナムとの友好交流活動

 こうしたベトナムとの友好交流活動を進めていく上で欠かせないのが、世界の子どもたちの置かれている現状をグローバルに捉える視点を育成することです。この点で、ユニセフの豊富な資料と経験を国際理解教育に生かすことを重視したいと考えます。(本校では、2003年度にユニセフの研究指定をいただきました。)殊に、世界中の学校に行けない子どもたちの問題や、貧しさが故に幼くして命を失っている同世代の子どもたちの問題を取り上げ、日本での日常の生活からは決して知ることができない世界史的な課題を、小学生に相応しい形で学ばせたいと考えます。

 そうした意味では、本実践のユニセフの資料等を用いた学習の部分は、世界の現状と理念の学習であり、ベトナムとの交流は、世界の変革につながる具現的な実践と位置づけることができると考えます。そこで、本実践では、学習テーマとして「知ろう世界の友だち」と「交わろうベトナムの友だち」の両課題を有機的に結びつけることにより、世界に目を開き、世界から生き方を学ぶ子どもたちを育てることができればと考えます。

続きを読む

Leave a Reply