アリを育ててみよう(6)

6.クロオオアリの子育て日誌からわかること

矢坂山全景(南方より望む)

矢坂山全景(南方より望む)

 筆者は、1966年にクロオオアリの子育ての記録をまとめています。女王アリを採取した場所は、岡山市内の矢坂山で、15個体をサンプルとしました。観察は6月19日から8月18日までの毎日で、卵の数、幼虫の数と体長、繭(蛹)の数、成虫(働きアリ)の数を記録しています。この研究の目的は、交尾後何日で産卵を始めるか、孵化・・羽化までの日数はどうか、卵・幼虫・蛹のそれぞれの個体数はどうかを調べることにありました。

 観察からわかったことは、交尾から産卵を始めるまでの日数は平均で11日間、孵化までに平均19日間、蛹化までに平均9日間、そして、羽化までに平均14日間かかるということでした。ですから、女王アリが巣作りを始めてから平均50日で最初の働きアリが誕生したことになります。岡山市での場合、働きアリが誕生するのは、平均で8月1日になりました。夏の真っ盛りということになります。また、観察を終了した8月18日の時点で、働きアリの平均個体数は7.2匹、同じくその時点での全個体数(卵・幼虫・蛹・成虫)の平均は18.6匹でした。

 ここで、考慮しなければならないことは、この観察は、自然の中でのものではなく、環境が人工的に作られている中での記録であるという点です。この点の検証としては、次の2例で比較検討することで、ほぼ確かめられたと考えています。いずれも、15体のサンプルと同時に結婚飛行をしたと思われる矢坂山の現地で二度調査をしています。一度目は6月25日で、この時発見した新女王アリの巣には、卵が7個ありましたが、観察中の15体の例では、卵の個数は平均7.5個でした。また、二度目は8月14日で、この時矢坂山で発見した新女王アリの巣には、働きアリが7匹いましたが、観察中の15体の例では働きアリの個体数の平均は6.7匹でした。この2例で見る限り、シャーレの中でも自然界と同じように子育てが進んでいたといえます。

 さて、この観察日誌は8月18日で終わっています。それまでは、誕生した働きアリには砂糖水を与えていましたが、これは、かなり不自然な行為でした。本来なら、働きアリは地表に巣穴を開けて、栄養豊かな餌を取り入れるようになります。そうすることで、働きアリが次の世代を育て、大きな家族を作っていくことになります。観察を終了したのは、これ以上シャーレの中で飼っていては、自然界での本来の推移と同様の結果は得られないと考えたからです。

 最初に生まれてくる働きアリは、とても体が小さいのですが、一匹一匹がとても貴重な存在だといえます。先に紹介した人工巣に移してその後を観察すると、この最初の働きアリの寿命も調べられるかも知れませんし、そもそもどのようにして大家族になっていくのかが、数年をかけて観察できるかも知れません。筆者はそれにチャレンジしましたが、その時は上手く飼育できなかったように記憶しています。

 皆さんも、アリの飼育に是非チャレンジしてみてください。飼育しながら観察記録をこまめにとれば、おそらくその記録は貴重なデータとなることでしょう。

 アリの世界に魅せられる人々がひとりでも多く現れることを期待しています。

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